離婚調停を弁護士に依頼した方が良い場合とは
パートナーが協議離婚に応じてくれないので、離婚調停を申し立てようと考えていても、果たして自分1人で臨んで大丈夫なのか、弁護士に依頼した方がいいかと悩んでいる方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、離婚調停を弁護士に依頼した方が良い場合について解説していきます。
1 離婚調停を弁護士に依頼した方が良い場合とは
離婚調停は、弁護士をつけずに自分1人で申立てをして進めることができます。
離婚調停が始まれば、調停委員が手続を進行していきます。また、書類の提出方法等は裁判所の職員が教えてくれたりもします。
しかし、近年は、離婚調停でも弁護士に依頼している人が多くおられます。
中でも、以下に挙げるケースは、弁護士に依頼するのが望ましいいえるでしょう。
2 弁護士に依頼した方が良いケース
弁護士に依頼した方が良いケースとしては、以下のものが挙げられます。
親権に争いがある場合
子の親権について争いがある場合には、夫婦同居中の子の主な監護者がどちらだったかや、別居後の子の監護状況に問題がないかなど、親権者を決めるにあたって重視される事情がある程度決まっています。
これらの事情を調査するために、家庭裁判所調査官という専門の職員が夫婦それぞれから事情の聴き取りをしたり、子の学校・保育園等に訪問することもあります。
こうした調査において、自身が不利にならないようにするためには、どのような事情をアピールすべきなのかを検討し、提出すべき資料を準備しておく必要があります。
自分1人だけでこうした手続に対応すると、どういった事情が有利になるか、反対にどういった事情が不利になるのかが分からなかったり、誤っていることもあります。
そのため、有利な事情を十分アピールができなかったり、資料を提出できなかったりすることが少なくありません。
弁護士に依頼すれば、法的にみて有利な事情を十分主張することができますし、有利な事情を裏付ける必要十分な資料を提出することができます。
弁護士への依頼が望ましいといえるでしょう。
養育費に争いがある場合
養育費の金額は、一般的には、夫婦の収入、子の人数・年齢などに応じて決まるものであり、調停では、裁判所が作成した「養育費算定表」に基づいて金額を決めます。
しかし、「養育費算定表」は、子どもが公立学校に行っていることを前提として作成されており、また、原則的には20歳になる月が終期とされています。
そのため、子どもが私立学校に通っている場合などの金額をどうするか、大学等、高等教育機関への進学が見込まれる場合の終期の延長等について争いが起こる場合があります。
このようなケースでは、離婚前から子どもが私立学校に通っていたか、相手方が私立学校に通うことについて了承していたかといった事情や、夫婦の最終学歴、職業・経済力等などを考慮して金額を決めることになります。
そして、上記のような事情を主張するためには、客観的な証拠や具体的な根拠が必要です。
また、そもそも考慮すべき事情がよく分からなかったり、事情が明確になっても、裁判例や文献をもとに、法的主張をしなければならない場合もあります。
弁護士に依頼すれば、証拠を的確に整理して提出し、説得力のある根拠を示すことができますし、有利な法的主張を組み立てて主張することで、有利な結論を導くことができる場合もあります。
そのため、弁護士に依頼することが非常に望ましいといえます。
財産分与の争いがある場合
離婚調停においては、財産分与の内容や金額について争いが生じることがよくあります。
例えば、財産分与においては、パートナーが全ての財産を開示しているか分からない場合があります。
また、財産分与は、夫婦の同居期間内に夫婦それぞれの名義で取得した財産が対象となりますが、個人の財産(特有財産)に該当するものは除外されます。
さらに、財産分与は、対象財産の総額を折半するのが原則ですが、慰謝料としての意味や一方の配偶者に対する一定期間の扶養としての意味を含んで、不均等な割合で分配することもあります。
そのため、財産分与においては、全ての財産が開示されているか、特有財産にあたるかや、財産分与にどのような意味を含ませるかといったことが争点になり、調停が長期化する原因となります。
財産の開示については、調査や相手方への要求のやり方、交渉によって開示が成功するケースがあります。
また、特有財産の該当性は専門的な観点から検討することが必要な場合も多いですし、財産分与にどのような意味を持たせるかについては、離婚時に他にどのような給付を行うか、慰謝料や扶養料を支払うべき事案かといったことを検討する必要もあります。
これらの事項を検討して法的に裏付けのある形で説得力のある主張をすることは、一般の方では難しく、弁護士でなければできないといっても過言ではありません。
そのため、財産分与に争いがある場合には、弁護士に依頼するのが望ましいといえます。
不貞の有無について争いがある場合
パートナーの不貞を理由として離婚調停を起こした場合に、相手方が不貞をしていないと反論することも少なくありません。
不貞は民法上の離婚原因に該当し、調停が不成立になれば裁判で主張できる離婚理由であるとともに、慰謝料請求の原因ともなるものです。
そのため、不貞の有無について争いがある場合には、離婚調停において証拠を提出して、可能であれば担当裁判官に、離婚裁判になった場合の見通しを示してもらい、早期に解決を図ることが望ましいといえます。
不貞の証拠として認めてもらうためには、単に不貞相手と一緒に過ごしていることがわかるだけでは足りず、性交渉をしていることが明らか、あるいは強く推認できるようなものでなければなりません。
そのため、不貞相手とのLINEのやり取りのデータや探偵の報告書などの証拠が、上記のような評価ができるものかどうかを客観的に検討することが必要です。
当事者は、感情的になっていることも多く、冷静に証拠の評価を行うのが難しいため、弁護士が判断する必要性が高いといえます。
また、証拠のなかでも有利な部分をピックアップするなどの作業も必要になる場合があります。このようなことも知識や経験がある弁護士でなければ難しいでしょう。
以上の点から、不貞の有無について争いがある場合は、弁護士に依頼するのが望ましいといえます。
パートナーが弁護士をつけている場合
パートナーが弁護士をつけている場合には、自身も弁護士に依頼した方が良いといえます。
パートナーに弁護士が付いているということは、パートナーの主張が専門的な知識や経験に基づいて行われていることを意味します。
そのような相手方に対して、弁護士をつけずに対応しても、持っている力の差が大きく、主張の説得力という点で劣ってしまいます。
パートナーが弁護士をつけた場合には、自身も弁護士をつけるべきといえます。
1人で調停に臨むのが不安な場合
例えば、パートナーからDVやモラルハラスメントを受けていた場合や、パートナーの弁が立つ場合などは、自分1人で調停に臨むのはとても不安でしょう。
特に、DVやモラハラがあるケースでは、裁判所の周辺、入り口、待合室等でパートナーと顔を合わせてしまう可能性もあり、安全面での懸念もあります。
このような場合、特にDVやモラハラがあった場合には、弁護士に依頼して、DVやモラハラの事実をしっかりと主張してもらうほか、調停の実施方法について裁判所に配慮を求めてもらうことが必要です。
裁判所に申請することによって、電話会議やウェブ会議の方法を用いて調停に参加することもでき、裁判所で危険な目に遭うことを回避することも可能です。
また、弁護士がサポートすることによって、1人で問題を抱え込まずに済み、その点でも不安が和らぐことでしょう。
1人で調停に臨むのが不安な場合には、弁護士に依頼するのが望ましいといえます。
3 まとめ
離婚調停は、争点が多くなったり、複雑になることもありますし、1人で臨んでいると、調停委員が公平公正に対応してくれているのか不安になることもあります。
弁護士がついていれば、自分1人では言いにくいことも代弁してもらうことができますし、逆に、不利になることはセーブしてもらうことができるという面もあります。離婚調停は、その夫婦の事情によっては弁護士に依頼することが望ましいといえます。
当事務所には、離婚問題の実績が豊富であり、離婚調停の経験も十分に積んだ弁護士が在籍しております。
離婚調停に臨むにあたって不安がある方はぜひ当事務所にお気軽にご相談ください。