【財産分与を拒否された・決められない場合】調停、審判、裁判の流れ
配偶者と離婚することになり、いざ財産分与をしようとしたら、相手方に拒否されたり、夫婦の主張がかみ合わず決められないということも少なくありません。
そこで今回は、財産分与がなかなか決まらない場合に、どのような手続で決めることになるのかについて解説します。
1 財産分与とは
財産分与とは、婚姻生活中に夫婦で協力して築き上げた財産を、離婚の際にそれぞれの貢献度に応じて分配することをいいます。
財産分与は法律上の権利で、民法に、離婚に際して相手方に請求できることが定められています。
財産分与には、清算的財産分与、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与の3種類があります。
- 清算的財産分与とは、本来の意味の財産分与で、夫婦が婚姻中に形成した財産を清算するためのものです。夫婦が婚姻中に築いた財産を2分の1ずつ分けるのが、清算的財産分与では一般的です。
- 扶養的財産分与とは、離婚により困窮する元配偶者への扶養としての意味で行う財産分与ですが、実務上、行われる場面は多くありません。
- 慰謝料的財産分与とは、元配偶者に精神的な苦痛を負わせたことを理由とする慰謝料としての意味を持つ財産分与です。不貞や暴力が離婚原因の場合に、清算的財産分与に上乗せする形で行われることがあります。
2 財産分与は、離婚に向けて夫婦で話し合って決めるのが優先
財産分与の方法としては、協議、調停、審判や裁判があります。
離婚を夫婦間の協議で進める場合には、これとともに、財産分与についても話し合って決めることからスタートするのが一般的です。
夫婦間の協議で財産分与の合意ができた場合には、口約束で済ませるのではなく、離婚や親権者などほかの事項とともに公正証書を作成することが望ましいでしょう。
なぜなら口約束で済ませると、相手方が約束を覆して支払いを拒否したり、支払を怠った場合に強制的に取り立てる手段がないからです。
公正証書を作成し、これに強制執行認諾文言を入れておけば、相手が支払いをしてこなかった場合に、給与や預貯金を差し押さえて財産分与を実現することが可能となります。
3 財産分与の調停とは
財産分与について当事者間の協議が調わない場合には、家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員や裁判官を介して話し合うことができます。
離婚自体について調停を申し立て、離婚調停の中で財産分与について取り上げることもできますし、離婚自体は協議で成立させてから、財産分与についてのみ調停を申し立てることもできます。
なお、離婚成立後2年を経過すると、財産分与の請求ができなくなるので、注意が必要です。
4 財産分与の調停の流れ
離婚調停や財産分与の調停を申し立てたあと、日程調整をして、第1回の調停期日が決められます。
実際の調停手続は、主に男女1名ずつ合計2名の調停委員が、申立人と相手方の間を仲介して、双方の主張を聞き、妥協点を見出して、合意の成立を目指すという方法で行われます。
財産分与に関しては、お互いに自身が持っている財産に関する資料を提出することが必要となります。
例えば、預貯金に関しては預金通帳の写し、不動産に関しては不動産の査定書などを提出することとなります。
不動産については、価格をどのように算定するか対立することもあるため、夫婦双方が提出した査定の中間値として計算することも少なくありません。対立が激しいときには、裁判所に鑑定を申請することもあります。
夫婦双方の財産に関する資料が出そろった時点で、財産をどのように分配するか話し合って決めることとなります。
先ほども述べたとおり、婚姻後別居前までの間に夫婦が取得した財産を2分の1ずつ分けるのが一般的です。
5 財産分与の調停で決めること
財産分与の調停で決めることは、夫婦の財産を全て洗い出したうえで、「夫婦のどちらから財産分与としてどれだけの財産を相手方に分与するか」ということです。
例えば、妻の総財産が300万円、夫の総財産が500万円の場合、夫婦の総財産は800万円となるので、分与割合を2分の1ずつとすることに合意ができたら、各自800万円×2分の1=400万円を財産分与の結果保有することとなります。
そのため、このケースにおいては、調停において、夫から妻に対して100万円の財産分与をすると決められることとなるのです。
調停が成立した場合には、調停調書という書類を家庭裁判所が作成します。調停調書が作成されれば、財産分与をする側が期限までに分与を行わない場合には、給与や預金を差し押さえることが可能となります。
6 調停で財産分与が決まらなかった場合の流れ
調停で財産分与が決まらなかった場合、その後の流れは、①離婚調停の中で財産分与も行われているか、②離婚は既に成立していて財産分与についてのみ調停が行われているかによって異なります。
6-1 離婚調停の中で財産分与が行われている場合
このケースにおいて調停が不成立になったということは、離婚自体について調停が成立していないということになります。
この場合は、離婚訴訟を起こして、その手続の中で改めて、財産分与が取り上げられることとなります。
判決が下されることとなれば、財産分与についても裁判官の判断がなされることとなります。
裁判手続の中で離婚について和解が成立することもあり、その場合には、財産分与についても和解手続の中で決めることとなります。
6-2 財産分与についてのみ調停が行われている場合
このケースにおいて調停が不成立になった場合には、手続が自動的に審判に移行することとなります。
審判というのは、裁判官が判断を下す点で裁判に似ていますが、裁判と異なり常に非公開の手続で行われます。
裁判官は、財産分与について当事者双方から提出された資料や言い分をもとに審判を下すこととなります。
7 財産分与の調停の対応を弁護士に依頼するメリット
財産分与の調停の対応を弁護士に依頼するメリットには、以下のものがあります。
7-1 精神的な負担を軽減することができる
離婚をするときには、親権の問題や養育費の問題など他に考えることがたくさんあり、当事者の方の精神的な負担はとても大きいものです。
そんな中で、財産分与についても自分で資料を整理して考えをまとめなければならないとなると、さらに精神的な負担が増すこととなります。
弁護士に財産分与を依頼すれば、資料の整理をしてもらえるだけでなく、財産分与の交渉も任せることができるため、精神的な負担を軽減することができます。
7-2 戦略的に話し合いを進めることができる
ある財産が財産分与の対象になるか、財産評価の時点、財産の評価方法等、法的な検討が必要になる場面が多くあります。
財産分与を弁護士に依頼すれば、自身がより有利になるように、様々な事情をくみ上げて法的に整理し、戦略的に調停での話し合いを進めてもらうことができます。
7-3 感情的な対立を和らげることができる
離婚に際しては、夫婦間の日ごろの感情のもつれなどから感情的になり、夫婦間で不要な対立が生じることが多いです。
そのために紛争が長引き、なかなか離婚問題や財産分与の問題が解決に至らなくなります。
弁護士に依頼すれば、合理的に交渉を進めてもらうことができるため、感情的な対立をやわらげ、早期の紛争解決が可能となります。
8 財産分与は当事務所にご相談ください
財産分与の流れ、弁護士に依頼した場合のメリットなどがお分かりいただけたと思います。
当事務所の弁護士は離婚問題に精通しており、財産分与についても経験が豊富です。
財産分与でお悩みの方は、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。