共働き夫婦の離婚と財産分与

はじめに

夫婦が共働きの世帯は年々増加しており、2015年には6割を超えています。
ご相談を受けていても、子どもがある程度大きくなっている家庭の場合、大部分の夫婦が共働きという印象を受けます。
共働き夫婦で、特に妻が正社員等、フルタイムで働いている家庭では、夫婦がお互い、自分の収入は自分で管理し、家庭で使うお金を出しあっているケースがあります。

このような夫婦が離婚する場合、財産分与はどのようになるでしょうか。

共働き夫婦の財産分与の対象となる財産について

共働き夫婦の場合、預貯金は各自が自分の名義で行って管理し、夫婦がお互いの収入や財産をよく知らないというケースも珍しくありません。
妻が専業主婦の家庭に比べると、各自の預貯金は自分1人が働いて得た収入がもとになっていることが明らかなため、自分1人の財産であるという気持が強いかもしれません。

ですが、離婚時の財産分与にあたっては、その財産の名義に関わりなく、全て夫婦共有財産となる可能性が高いです。
先ほどの例でいえば、離婚の際には全ての預貯金が夫婦共有財産となり、財産分与の対象になる可能性が高いということです。
なぜなら、独身時代と異なり、夫婦それぞれが働いて収入を得られるのは、お互い、家庭内での有形無形の協力があってのことと考えられるからです。

もっとも、独身時代の貯金や、親から贈与された財産が夫婦共有財産にあたらないことについては共働き夫婦の場合も異なりません。

共働き夫婦の財産分与の割合について

通常、離婚をする場合の財産分与割合については、例えば、預貯金が全て夫名義だったり、不動産が夫1人の名義だったとしても、2分の1ずつとするのが原則です。
このルールは、妻が専業主婦であることが多かった時代に、離婚した際、自分名義の財産を持たない妻を経済的に守るためにできたものだと思いますが、共働き夫婦にも原則としてそのまま適用されます。

ですから、共働き夫婦のどちらかが、2人の全財産の2分の1を取得したいと希望した場合、その希望は認められる可能性が高いのです。
もっとも、離婚する際、お互い、自分名義の預貯金等、自分が管理してきた財産をそのまま取得し、パートナーから財産は受け取らない、ということで合意できれば、夫婦の間で財産が移転することはなくなりますし、そのような合意をするケースは多いようです。

パートナーの財産の調査方法について

共働き夫婦の場合、預貯金を各自で管理していたり、生命保険も各自で加入しているなど、パートナーがどういった財産を持っているか、お互いがよく知らない場合があります。

では、パートナーの財産内容を把握するためにどうすればいいでしょうか。

1 パートナーに資料を開示してもらう

離婚について話し合う際、預貯金口座残高が分かる通帳コピー、証券口座残高が分かる書類、生命保険の解約返戻金証明書を取り寄せるなどしてもらい、そういった資料をまとめて開示してもらうのが良いでしょう。
銀行、証券会社、生命保険会社は、たとえ夫婦であっても、契約者以外の人には書類を発行してくれませんので、パートナーの財産に関する資料を直接発行してもらうことはできません。

2 自分で調べる

パートナーが資料の開示に協力してくれない場合や、一部しか資料を開示しない場合もあります。
その場合、法に触れない範囲で、自分で調べることが考えられます。
例えば、銀行、証券会社や保険会社からパートナー宛に郵便物が届いて入れば、内容を見なくとも、パートナーがどの銀行・証券会社・生命保険会社と取引がありそうかは分かります。
パートナーが家族と共用の場所に保管している過去の書類の中に、銀行等からの手紙が入っている場合もあります。
なお、夫婦間にもプライバシーがあるので、例えばパートナー宛の郵便を無断で開封したり、無断でスマホ内の情報をとることは違法とされる可能性が高いことに注意する必要があります。

3 調停手続で提出してもらう

離婚協議がまとまらず、家庭裁判所で離婚調停を行う場合は、家庭裁判所の調停委員から、銀行の通帳、証券口座の残高が分かる書類など、夫婦共有財産についての裏付け資料を提出するよう、指示を受けます。
離婚協議中は資料を開示してくれなかったパートナーが、裁判所からの指示で初めて資料を開示した、というケースはよくあります。

ただ、パートナーが一部しか資料を開示していないのではないか、という疑いがあるケースもあります。
その場合に、すでに知っている結果と一致しなければ、「A銀行にも口座があるはず」「B証券会社から手紙が来ていたから証券口座もあるはず」といった指摘ができます。
具体的な指摘ができれば、多くの場合、その口座の資料も開示を受けられます。

他方、「どこかは全く分からないけれども、銀行口座があるはず」と主張しても、パートナーからは「ない」との回答を受けることがほとんどです。
この場合に家庭裁判所がパートナーの財産を探す、ということは一切行ってくれません。
家庭裁判所は、その財産は存在しないものとして手続を進めることになります。

4 裁判所の手続を利用して調査する。

主に離婚訴訟になった場合ですが、パートナーが財産開示を拒絶し続けている場合、裁判所に対して調査するよう申立てをすることができます。
そして、裁判所が必要だと認めた場合、裁判所から金融機関等に対して、資料開示を依頼します(「調査嘱託」手続)。
この場合も、原則として取引金融機関名および取引支店名を、調査嘱託を申し立てる側で特定する必要があります。
ですので、ここでも、事前に自分で調べて、パートナーが口座を持っている金融機関名や支店名だけでも把握しておくことが重要です。

なお、法律に基づく裁判所からの照会であるであるにもかかわらず、個人情報保護を理由に、口座名義人の承諾がないと開示を拒絶する金融機関もあり、「調査嘱託」手続も万能ではありません。

共働き夫婦がペアローンで購入した不動産について

夫婦が2人ともフルタイムで働いていて、「ペアローン」で住宅ローンを組むケースが増えています。
「ペアローン」とは、一般に住宅を購入する際、夫婦がそれぞれ住宅ローンを組んで、かつ、お互いにパートナーのローンについて連帯保証をしたり、連帯債務者となるローンをいいます。
メリットは1人で住宅ローンを組むより高額のローンを組めることです。
近年、都市部では住宅価格が高騰しています。共働き世帯の場合、妻にも単独で住宅ローンを組めるほどの収入があることから、ペアローンで住宅を購入する夫婦が増えているそうです。

では、ペアローンで住宅を購入した夫婦が離婚する場合、住宅の財産分与はどうなるでしょうか。

1 住宅の市場価値>ペアローン残額の場合

こういった場合を「アンダーローン」と言います。
この場合は単独で住宅ローンを組んだ場合とあまり変わらず、夫婦2人で住宅を売却し、2人のローンを完済した上で、残額を夫婦共有財産として、2分の1ずつ分与を受けるのが原則です。

2 住宅の市場価値<ペアローン残額の場合

こういった場合を「オーバーローン」と言います。
住宅がオーバーローンになっていたとしても、住宅ローンを組んだパートナーがローンを支払って住宅に住み続ければ、少なくとも経済的にはそれほど問題になりません(現実には、家族で住んでいた家に1人で住みたくないとか、1人で住むには間取りが広すぎるなど、問題がある場合が多いのですが。)。
夫婦のどちらかが1人で住宅ローンを組んでいる場合、月々のローン返済額はローンを組んだパートナー1人の収入で返済できる金額になっているはずだからです。

ところが、ペアローンの場合、「オーバーローン」だからといって、離婚する以上、そのまま夫婦で住み続けるという選択肢は通常取れません。
そのため、残ローン額を夫婦各自の財産で全額一括返済するか、それが不可能なら、別途、無担保ローンで借り入れをして清算するのが原則になります。
ローン残債を住宅売却時に一括返済するのが難しければ、住宅を他人に貸し出して賃料収入でローンを返済していくことも考えられますが、住宅ローンの契約上、他人への貸し出しができないケースもあります。
そのため、こういった場合、夫婦間での取り決めだけでなく、ローンを組んだ金融機関との調整、不動産業者への相談など、複雑な処理が必要になることが多くあります。

最後に

このように、共働き夫婦の離婚の場合、財産分与に限っても、これまで多かった、妻が専業主婦の家庭とは異なる場合が出てきます。
夫婦共働きの方が離婚を考える場合、弁護士への相談をお勧めします。

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