夫が資産家の場合(経営者・医師・不労所得など)

はじめに

夫が会社経営者(起業家)、医師、投資家等で高額の収入があり、多額の資産を持っている場合、財産分与や養育費に関するトラブルが多く起こります。
そこで、夫が多くの資産を持つ場合の離婚の注意点について解説します。

夫が資産家の場合の財産分与の問題

夫の財産の内容が分からない

夫が事業をしたり、投資をしている場合、夫の財産内容を妻が全く把握していない場合が多くあります。
個人の財産に関する情報はプライバシー性が高く、法律に基づき裁判所や弁護士が金融機関等に夫の財産内容の開示を求めても開示されるとは限りません。
また、夫が会社を経営したり、医療法人を経営している場合、夫個人の財産と法人(会社)の財産は法律上、別個のものと扱われますので、そもそも開示を求めることができません。

そのため、夫の財産内容を予め把握しておくことが大切です。
夫婦とはいえプライバシーがあるので、夫の書類や通帳等を勝手に見ることはできません。
ですが、例えば特定の金融機関、証券会社からハガキが来ていたとか、株主総会の案内が来ていたといった情報があれば、離婚協議開始後、金融機関名などを指摘することで多くの場合、任意で開示に応じてもらえます。
反対に、夫の財産内容について、全く内容が分からないまま、任意での開示を求めても、全ての財産内容が開示されるかどうか分かりません。

法人(会社)名義の財産は分与対象にならない

夫が会社などの法人を経営している場合、法律上、個人と法人は別個に扱われます。
ですので、法人の財産自体は財産分与の対象にならないのが原則です。

例外として、実質的には個人の事業と同視できるような会社の場合や会社の事業に妻も関わっていた場合等には、会社名義の財産も財産分与の対象となることがあります。

夫が保有する会社の株式等の持分は分与対象となる

法人名義の財産は分与対象にならなくても、夫が法人の株式等の持分を持っていれば、その持分は夫婦共有財産になり、財産分与の対象となります。

株式の評価方法

上場株式の評価方式

財産分与の対象となる財産の範囲は通常、婚姻関係が破たんしたときを基準とします。
多くの場合は別居時が基準です。
従って、夫が上場株式を保有している場合、別居時の保有株式が財産分与対象となります。

次に、夫婦共有財産の評価は、通常、現在時点で行います。
従って、別居時の保有株式数に市場における直近の株価をかけた金額が夫婦共有財産の価値になります。

非上場株式の評価方式

夫が上場会社を起業したというケースを極めて稀です。
多くの場合、夫が経営している会社は株式を上場していない会社で、夫が保有しているのは非上場株式です。

非上場株式の評価方法について、裁判所で決めた基準はありません。
事件ごとに、当事者間の合意や、裁判所の裁量で評価方法を定めています。

裁判所において非上場株式の評価方法が問題になる場合としては、遺産の中に非上場株式が含まれる場合の遺産分割事件や、会社法上の株式買取請求事件が典型的です。
そこで、離婚に伴う財産分与の場合も、こうした事件と同様の評価方法を用いることが多いと思われます。

会社法に基づく株式買取請求では以下の方式のいずれか、または組み合わせで株式の評価をします。

純資産方式会社の総資産価額から負債と法人税などを控除した純資産価額を発行済株式数で除して評価する方式
配当還元方式会社の配当金額を基準として、これを発行済株式数で除して評価する方式
類似業種比準方式会社と類似する業種の事業を営む会社群の株式に比準して評価する方式
収益還元方式将来の予想年間税引後純利益を資本還元率で除したものを発行済株式数で除して評価する方式

また、遺産分割事件では、相続税を算定する際の税務上の評価基準を用いることがあります。
税務上、小会社の場合は「純資産方式」により算定されます。

そこで、離婚に伴う財産分与の場合も以上の方式を用いて株式の評価を行うことになります。

以上の評価方法による計算は、会計士などの専門家に依頼して行うことになり、相当の費用がかかります。
ですので、非上場株式に多額の価値が見込まれる場合は費用をかけても算出することになることが多いですが、それほどの価値が見込まれない場合にまで使うことはできません。

財産分与の割合

夫婦が結婚してから離婚するまでの間に増えた財産のうち、2分の1は財産分与の対象となるのが原則です。
ですが、これは法律の明文で定められたルールではなく、例外があります。

例えば、医師が開業して多額の収入を得るようになった場合、起業して株式を上場した場合、アーティストとして成功した場合など、夫が個人の能力を生かして大きな財産を取得した場合、財産分与の割合が2分の1から修正されることがあります。
裁判例には、夫が病院を開業して多額の資産を形成したケースで、夫の寄与割合を6割、妻の寄与割合を4割とした事件があります。
また、夫が成功した企業経営者、妻が主婦のケースで、夫名義で多額の資産があった場合に、妻の財産分与額を夫の資産の数%と定めた事件があります。

夫が資産家の場合の養育費の問題

家庭裁判所で養育費の金額を決める場合、裁判所が作成した「養育費算定表」を用いて養育費を算定することが多いです。
「養育費算定表」は、夫婦の年収と子の人数・年齢が分かれば大まかな養育費が算定できる表で、大変便利ですが、限界もあります。

「養育費算定表」に記載された年収は、給与所得者の場合2000万円、自営業者の場合1567万円ですので、夫の年収がこの金額を超える場合、算定表をそのまま使うことができません。
そこで、夫の年収がこの金額を超える場合、養育費の算出をどのように行えばいいでしょうか。

家庭裁判所の実務上、「養育算定表」における支払義務者の年収が2000万円(給与所得者)、1567万円(自営業者)を超える場合、養育費の月額を、「養育費算定表」に記載された上限金額で定めるケースが多いようです。
例えば、0~14歳の子1人の場合、「養育費算定表」の上限金額は24~26万円です。
一般論としては、夫の収入が高くなれば、養育費の金額も高くなります。
ですが、夫がたとえ数千万円から数億円の年収があったとしても、夫の収入に比例して養育費の金額が無制限に上昇していくわけではないことに注意する必要があります。

弁護士に相談するメリット

このように、夫が資産家の場合、財産分与、養育費といった場面で、一般的な離婚の場合に比べて注意点が増えますし、財産分与額、養育費額の算定も通常の会社員に比べて難しくなります。
一般的な知識だけで話合いを進めると、予想していなかった結果になりかねません。
そのため、弁護士に相談して、財産分与、養育費等、金銭面の算定や、今後の進め方についてアドバイスを受けることをお勧めします。

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