離婚訴訟を起こす場合の離婚原因

離婚調停をせずに離婚訴訟を起こすことはできません

離婚をしたくても、パートナーが離婚に応じない場合や、離婚の条件について合意できないため、離婚を拒否する場合があります。

この場合、離婚を希望する配偶者は、家庭裁判所に対して離婚訴訟を提起する方法があります。

ですが、離婚訴訟は、いきなり起こせるわけではありません。
法律で、離婚訴訟を起こす前に離婚調停を行い、離婚調停が不成立になった場合に初めて離婚訴訟を起こすことができる、と定められています。

これは、離婚が家庭内部の問題なので、できるだけ話し合いで解決した方が良いということから定められたものです。

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離婚訴訟で離婚が認められるのはどのような場合か

協議離婚や離婚調停で離婚する場合、離婚の理由に特に制限はありません。
しかし、離婚訴訟を起こす場合、民法で定められた「離婚原因」を主張する必要があります。

民法で定められた「離婚原因」は以下の通りです(民法770条1項)。

1 「配偶者に不貞な行為があったとき」(1号)

「不貞な行為」とはどういう行為か

パートナーが不倫をしていた場合、離婚の原因になります。
民法の不貞行為とは、基本的には性的関係があることをいいますので、パートナーが第三者と恋愛関係になっていたとしても、性的関係がなければ、原則として不貞行為にあたりません。

不貞行為の証拠はどういうものか

裁判で、パートナーが不貞行為はないと争う場合、不貞行為があったことについて証拠を提出して証明する必要があります。証明できなければ、裁判所は離婚請求を認めず、離婚はできません。
不貞行為の証拠としてよく使われる資料に次のようなものがあります。

  • 探偵の調査報告書
  • 不貞相手とのメール、LINEなどSNSのメッセージのやりとりの画面を写真撮影したもの、印刷したもの、スクリーンショット
  • パートナーと不貞相手がホテルなどプライベートな状況で撮影した写真、外出したり、旅行に行った時の写真
  • パートナーが不貞行為を認める旨を記載した書類

2 「配偶者から悪意で遺棄されたとき」(2号)

悪意の遺棄とはどういう行為か

正当な理由がないのに、夫婦の同居協力扶助義務に違反する行為をして、夫婦生活を継続する意思が認められないことをいいます。

悪意の遺棄は認められにくい

相談の際に、ご相談者から、パートナーが生活費を負担しない、勝手に別居されたなどの事情で、離婚原因にあたるのではないか、という質問を受けることがよくあります。
また、離婚訴訟を開始すると、パートナー側からの反論で、パートナーが「悪意で遺棄された」と主張されることもあります。

ですが、実務上、この条項を根拠として正面から離婚が認められるケースは少ないという感覚があります。
結局、後述の「婚姻を継続し難い重大な事由」の判断にあたり、こういった事情を考慮することが多いように思います。

3 「配偶者の生死が3年以上明らかでないとき」(3号)

生死不明とはどういう行為か

パートナーとの最後の連絡以降、3年以上連絡が取れない生死不明の状態が続いていることをいいます。

生死不明を理由として訴訟を起こす場合の手続

裁判は、まず、訴状を裁判所に提出し、裁判所から訴状副本(写し)をパートナーに送るという手続を行います。
離婚訴訟は、請求が認められれば離婚という夫婦にとって重い結果を決める手続ですので、相手方に十分争う機会を与える必要があるからです。

ですが、パートナーが行方不明の場合、裁判所からパートナーに対して訴状を送ることができません。
この場合、「公示送達」という手続を行い、パートナーの所在について十分な調査を行い、それでも所在不明の場合は、パートナーに訴状を送る手続を行わず、法律上、訴状を送ったものとみなして、裁判を行います。

4 「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」(4号)

強度の精神病とはどういう場合か

夫婦間の協力扶助義務を果たすことができないほど重症の精神病で、回復が困難な状態をいいます。

強度の精神病を理由とした離婚は認められにくい

夫婦関係の悪化や家庭の経済状態等が理由で、パートナーの精神状態が悪化しているケースが良くあります。
ですが、この条項がいう強度の精神病とは本当に重症のケースで、例えば、日常生活が送れる程度のうつ病等の病気では、強度の精神病にはあたりません。
この条項を基に、最高裁が初めて離婚を認めた事件では、パートナーが統合失調症となり、6年間入院していました(最高裁昭和45年11月24日判決)。

また、パートナーが強度の精神病になっていても、それだけで離婚が認められるわけではなく、パートナーの今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的対策をとって、離婚後に、ある程度の生活の見込みがたつことが必要と考えられます。
つまり、パートナーが強度の精神病になっただけでは離婚が認められず、離婚後も病気のパートナーが生活に困らないように、できるだけのことをする必要がある、ということです。

このように、この条項をもとに離婚が認められるのはかなり珍しいケースだと思います。
ただし、パートナーの病気を理由とした離婚は、次の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」として認められることがあります。
ですから、パートナーの病気を理由として離婚を希望する場合、婚姻を継続し難い重大な事由」がある、として主張することが多いでしょう。

5 「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(5号)

婚姻を継続し難い重大な事由とはどういう場合か

一般的に、婚姻関係が破綻しており、回復の見込みがないこと、をいいます。
実際の事件では,この条項を理由とするか、他の条項とこの条項を理由に、離婚訴訟を提起するケースが一番多いと思います。

では、どのような場合に「婚姻関係が破綻しており、回復の見込みがないこと」といえるかについては非常に難しく、明確な判断基準はありません。

ですので、事件ごとに考える必要がありますが、よく問題になるケースには次のようなものがあります。

暴行・暴言(モラルハラスメント)を理由とする場合

パートナーから暴力を受けたことを理由として離婚を請求する場合、暴力により、婚姻関係が破綻していると認められる可能性があります。

ですが、1回でも暴力を受けたら婚姻関係が破綻しているということになるわけではありません。
暴力の回数、程度、暴力をふるった理由などを総合的に判断して、婚姻関係が破綻していると裁判官に判断してもらう必要があります。
ですので、例えば、偶発的に1回,パートナーから暴力を振るわれた,というだけでは婚姻関係が破綻したと認められる可能性は低いでしょう。

また、パートナーから暴力を振るわれています、という相談を受けると、暴力を受けた証拠が全くない場合がよくあります。
状況によっては難しいと思うのですが、けがをしたのであれば病院を受診し、診断書を取ることや、けがをした部位の写真を撮るなど、暴力を受けたことが後から客観的に証明できるように証拠を残すことが重要です。
なぜなら、暴力を受けたことを理由として離婚請求をする場合、パートナーが暴力をした事実自体を否定したり、けがの程度について争うことがよくあるからです。

次に、最近、多くの人が「モラルハラスメント(モラハラ)」という言葉を知るようになり、モラルハラスメントを受けているので離婚したい、という相談をよく受けます。
ですが、モラルハラスメントは自宅など、第三者のいないところで行われることが多いですし、モラハラをしているパートナーは、モラハラをしているという自覚がない場合が多いです。

そのため、モラハラを理由として離婚を請求する場合、パートナーが争うことが多く、モラハラを受けた証拠を残すことが非常に重要です。

性格の不一致を理由とする場合

パートナーとの性格の不一致、結婚観、生活観の違いから、離婚をしたいという相談もよく受けます。

ですが、結婚したとはいえ他人同士が共同で生活するのですから、性格の不一致、結婚観、生活観の違いは多かれ少なかれ、どの夫婦にもあるものです。
そのため、性格の不一致、結婚観、生活観の違いだけで離婚請求をしても、裁判官が婚姻関係が破綻している、と判断する可能性は非常に低い、と言われています。

ただ、性格の不一致等、パートナーと考え方や気持が合わないことを理由として離婚を希望する方は多いので、そのようなケースでは、協議離婚や調停離婚で解決することをお勧めしています。

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